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業績が上がらないまま賃上げを続ける前に。まだ打っていない販路と売り方の探し方

「材料費や燃料費の高騰が続く中、価格転嫁が難しく、賃上げ原資の確保に苦慮」。中部の建設業の会社が、日本商工会議所の調査に寄せた声です。
業績は上がらないまま、給料だけを上げる。
ですが、業績が上がらないのに賃上げを続けるしかない、は正しくありません。業績を上げる手は、今のやり方の外にまだ残っています。
製造業の会社を経営してきた立場から、その手の探し方と、調べ物の進め方を書きます。
業績が上がらないなら、人を守るために賃上げを続けるしかないのではありませんか
人を守るための賃上げは、間違った判断ではありません。辞められてから採り直すにも、費用と時間がかかるからです。
問題は、賃上げの横で業績を上げる手が止まっていることです。
自社の数字が見えていない、という面もあります。どの取引先で、どの商品で利益が出ているのか。そこが見えていなければ、どこに手を打つかも決まりません。
ただ、それ以上に大きいのは、業績を上げるための新しい手を打っていないことです。いつもの取引先に、いつもの商品を、いつもの営業担当が売る。去年と同じやり方を今年も続け、売上が伸びないと頭を抱える。
同じやり方を繰り返しているかぎり、結果も去年と同じ幅にしか動きません。そして毎年上がるのは、人件費のほうです。
業績が上がらないまま賃上げしている会社は、どれくらいあるのですか
日本商工会議所の調査では、賃上げを実施した、または予定している中小企業のうち、60.9%が「業績の改善が見られないが賃上げを実施・予定」と答えています(出典:日本商工会議所・東京商工会議所「中小企業の賃上げ・賃金改定に関する調査」、2026年6月8日公表)。業績が上がって給料を上げた会社より、業績が上がらないまま上げた会社のほうが多いということです。
原資をどこから出そうとしているかは、これとは別の調査にあります。日本商工会議所が2023年に行った調査で、賃上げの原資を確保するための取り組みを複数選んでもらうと、最も多かったのは「既存の商品・サービスの値上げ、価格適正化」で37.0%でした。「売上増に向けた新たな販路の拡大」は35.2%です(出典:日本商工会議所・東京商工会議所「最低賃金および中小企業の賃金・雇用に関する調査」、2023年3月28日公表)。
新しい販路を広げる手を打っていた会社は、約3分の1にとどまります。
賃上げを続けながら、業績を上げるためにこの1年で何を新しく試しましたか
ここで、自社のことを確かめてください。
新しい取引先を探す仕事は、いま誰が持っていますか。その人は、この1年で何社に新しく声をかけましたか。
答えが「特に決まっていない」「営業担当が手の空いたときに」であれば、新しい手は誰の仕事にもなっていません。誰の仕事でもないものは、日々の受注と納品に押されて後回しになりがちです。後回しが続けば、売上は今の取引先の増減に左右されやすくなります。
これは怠けているからではありません。今の取引先に応えるだけで、手がいっぱいになっているのです。
自社の業績のどこから手を打つかを一緒に見る場合は、無料の相談で状況を伺います。
このまま賃上げだけを続けると、何が起きますか
今年上げた給料は、来年も下がりません。最低賃金が上がれば、その下の層から押し上げられます。人件費は、毎年少しずつ重くなっていきます。
売上が同じなら、その分は利益から出ることになります。利益が細れば、次の年に賃上げを続ける余力も細ります。
賃上げが続けられなくなったとき、守りたかった人が辞めていくおそれがあります。辞めた人の穴を埋める採用にも、費用と時間がかかります。
賃上げの原資のために、値上げやコスト削減をすればいいのではありませんか
どちらも効く手です。ただ、効く条件があります。
値上げは、原資の出どころとして最も直接的です。コストが上がっているのに価格を据え置いているなら、まず手を付ける価値があります。どこまで上げても利益が残るかは計算で出せます。その出し方は、値上げの記事に書きました。ただし値上げが上げるのは、今の取引先から入る売上だけです。取引先の数は増えません。
コスト削減は、削れるものが残っているときに効きます。何年も削ってきた会社では、削れるものが先に尽きます。
補助金や税制は、1回の賃上げを助けます。毎年続く人件費の上昇を、毎年まかなう仕組みにはなりません。
営業の回数を増やすのは、今の相手に今のやり方で当たる回数を増やすことです。相手と売り方が同じなら、返ってくる答えは大きくは変わりません。
どれも、今のやり方の中で原資をやりくりする手です。業績を上げる手は、その外にあります。
今のやり方の外にある、業績を上げる手は、AIでどう調べるのですか
今のやり方の外にある手とは、自社がまだ売っていない相手、まだ使っていない売り方、まだ提案していない商品のことです。
マーケティングと営業の両方に、それはあります。誰に、何を、どう知らせるか。どの取引先に、何を提案するか。可能性のあるものは、全部並べてから選ぶ必要があります。
並べるのが止まってきたのは、調べ物と下書きに時間がかかるからです。似た業種の会社を探す、競合の値段を比べる、商品説明を書き直す、過去の取引を見直す。どれも日々の受注と納品の合間には入りません。
この調べ物と下書きは、AIに渡せます。
| 側 | 作業 | AIに渡すもの | AIが返すもの | 人が決めること |
|---|---|---|---|---|
| 知らせる | 買いそうな業種と地域の洗い出し | 既存客の一覧(業種・所在地・買ったもの) | 似た業種・地域の候補と、似ていると言える理由 | どこに知らせるか |
| 知らせる | 競合の価格と売り方の比較 | 競合のホームページやカタログなどの公開情報 | 価格帯・売り方・強調している点の比較 | 自社をどこに置くか |
| 知らせる | ホームページの商品説明と事例紹介 | 製品の仕様と納品実績 | 業種ごとに書き分けた説明と事例の下書き | 載せてよい実績か、言い過ぎがないか |
| 知らせる | 展示会の資料と既存客への案内 | 新しく対応できるようになったことと、相手の業種 | 資料と案内文の下書き | 誰に送るか、何を約束するか |
| 知らせる | 問い合わせへの返事 | 問い合わせの文面と、過去の回答や見積もり | 返事の下書き | 納期と価格をどこまで約束するか |
| 売りに行く | 既存客から次に売れるものを探す | 販売管理の取引履歴 | 買う周期、一緒に買われるもの、止まった取引先 | 誰に何を提案するか |
| 売りに行く | 提案書の下書き | 相手の公開情報と自社の実績 | 相手の課題に合わせた提案書の下書き | 条件と価格 |
知らせる側(マーケティング)では、まず誰に知らせるかを広げます。たとえば、金属部品を作っている会社が、今の取引先の業種と所在地をAIに渡したとします。返ってくるのは、同じ部品を使っていそうな別の業種と、その業種の会社が集まっている地域の候補です。
競合の比較では、同じ部品を扱う会社のホームページを並べ、価格を出しているか、納期の短さを売りにしているか、小ロットに応じるかを見比べます。自社だけが言っていない強みが見つかれば、それを次に見せる売り方の候補にできます。
知らせる先と見せ方が決まったら、知らせる中身を作り直します。製品の仕様と納品実績を渡すと、ホームページの商品説明や事例紹介を業種ごとに書き分けた下書きが返ります。展示会の資料や既存客への案内も、新しく対応できるようになったことを渡せば下書きになります。問い合わせには、過去の回答や見積もりを渡して返事の下書きを作ります。人が決めるのは、載せてよい実績か、誰に送るか、納期と価格をどこまで約束するかです。
売りに行く側(営業)では、どの取引先に何を持っていくかを決めます。販売管理の取引履歴を渡すと、取引先ごとの買う周期と、一緒に買われているものが一覧になります。ある部品を買っている取引先が、それと一緒に使われる部品をまだ買っていなければ、そこが次の提案の候補です。
履歴からは、半年ごとに同じものを買っていた取引先が、この1年は注文していないことも見えてきます。止まった取引先に何から声をかけるかは、連絡が途切れた取引先の記事に書きました。
見積もりを出したまま返事の無い案件も、見積書の控えを渡せば拾えます。いつ、どの取引先に、何をいくらで出したかが並べば、もう一度声をかける順番と、条件を見直すかどうかを決められます。
訪問の前には、相手の会社のホームページや公開されている情報を渡し、最近の動きと、困っていそうなことの候補を挙げさせます。提案書は、その候補に自社の実績のどれが効くかを添えた下書きにします。人はそこに条件と価格を入れて仕上げ、どの取引先から回るかを決めます。
注意も1つあります。AIの調べ物には、古い情報や誤りが混ざります。候補の会社が今も営業しているか、競合の値段が今のものかは、元のページを開いて確かめます。取引先の名前が入った履歴を渡すときは、社外に出してよい形にしてから渡します。
業績を上げる手を調べた先で、何が変わりますか
調べ物と下書きが早く終わると、知らせる側では、ホームページや展示会、既存客への案内で、これまで見せていなかった強みを見せられます。問い合わせへの返事も早められます。売りに行く側では、営業担当が、当たる相手と持っていく提案を持った状態で動けます。新しい見込み客への声かけ、止まった取引先へのフォロー、競合と違う売り方での提案。今のやり方の外にあった手が、担当者の予定表に入ります。
大変なのは、どの手から試すかを決めることと、試した結果を見て次を選ぶことです。そこは社長と営業担当が決めるしかありません。難しくないのは、調べ物を始めることです。今の販売管理やExcelの取引履歴と、競合のホームページのような公開情報を、そのままAIに渡すところから始められます。新しいシステムを入れ替える必要はありません。
業績を上げる手が回り始めれば、賃上げを「人を守るための出費」から「伸びた業績の配り方」に変えていけるはずです。続けるしかない賃上げを、続けられる賃上げにするのは、今のやり方の外で打つ手です。
よくある疑問
Q. 中小企業の賃上げの原資はどこから出せばいいですか
出どころは、値上げ、コストの見直し、売上を伸ばすことの3つです。値上げとコストの見直しは今の取引の中でのやりくりで、毎年続く人件費の上昇をまかなうには、まだ売っていない相手や商品で売上を伸ばす手も要ります。
Q. 業績が上がらないまま賃上げを続けるとどうなりますか
売上が同じなら、上がった人件費の分だけ利益が減ります。利益が減ると次の年の賃上げの余力も減るので、賃上げを続けるには、業績を上げる手を同時に打つ必要があります。
Q. 業績が伸びないまま賃上げを続けるとき、まず何を確かめればいいですか
取引先ごと、商品ごとの売上の推移を並べ、どこが減ったのかを確かめるところから始めます。原因の候補の確かめ方と打ち手の試し方は、売上が落ちた原因を確かめる記事に書きました。
Q. 営業や集客にAIはどう使えますか
集客では、ホームページの商品説明や事例紹介、展示会の資料、問い合わせへの返事の下書きに使えます。営業では、まだ取引の無い業種や地域の洗い出し、競合の価格と売り方の比較、既存客の取引履歴から次の提案先を探すこと、提案書の下書きに使えます。何を載せるか、どこから当たるか、どんな条件で出すかは人が決めます。
Q. 新しい販路を探すのに費用はかかりますか
調べ物は、今ある取引履歴と、競合のホームページのような公開情報から始められるので、新しいシステムへの投資は要りません。かかるのは、AIの利用料と、調べた候補に実際に当たる営業の時間です。